亀井洋一郎は、京都芸術センターの機関誌「藝文京」(京都市芸術文化協会 4月1日発行)に、自身の作品に関するテキストを寄稿しました。

以下、その内容を掲載します。

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「焼結体による描画」

私は昨年より、「Ceramics Drawing(セラミックスドローイング)」と題した平面作品の制作を試みています。セラミックスドローイングという言葉は私の造語で、「焼結体による描画」の意味で名付けました。

作品の制作には、画面となる支持体に紙状の耐熱材料であるアルミナペーパーを、描画材料にセラミック顔料や酸化金属、釉薬用撥水剤などの陶磁器材料を使用します。それらを素材としてドローイングイメージを描き、その後、支持体ごと板硝子で両面から挟み込むようにセッティングして740℃から800℃で焼成を行います。焼成工程で板硝子は溶け、そこで起こる硝子の熱融着によって画面は密閉状態にコーティングされて、作品は完成に至ります。制作は描画から焼成まで自らの設定したシステムに則って進められますが、それは「ある一定の秩序」を表現の下地に敷くことで、材料の滲みや撥水、焼成での変容など偶発的な現れをできるだけクリアに受け止めていきたいという考えに基づいています。

画面上のイメージはそうした双方の効果が相まって形づくられた事象の結果といえますが、制作を進めるにつれ、材料によっては焼成工程で想像以上の変化をみせることも次第に分かってきました。特に銅に関係する変化は興味深く、密閉された硝子内で自然発生的に起こる還元雰囲気の影響を受けて、そのイメージは鮮やかな変貌を遂げます。そうして立ち現われてくるドラマティックな様相は、ときとして深遠な自然のエネルギーを可視化させたようであり、現在、作品は更なる広がりを見せ始めています。

それはさながら化学実験のようでもありますが、私はこうした制作を通じて、高温の熱処理で際立つ「変化するもの」「変化しないもの」、「残るもの」「残らないもの」といった陶磁器材料の特徴を、ドローイング画面を構成する要素として扱うことで、それらの持つ色彩や物質感をより簡潔に表面化させたいと考えています。そして、そのような着眼の中心には、「うつわという形式にも、オブジェという形式にも当てはまらない、新たな形式でのやきもの表現は可能か」という表現形式に対する自らの立てた問いがあります。

2001年より継続して制作を行っている作品「Lattice receptacle(ラティスレセプタクル)」で、私が最初に向かい合ったのは「うつわ」と「オブジェ」という二者択一的な表現形式の在り方を「私はどのように共存させ得るのか」ということでした。先述した問いはこうした試みを経て、形式への意識を更に他方へ進めたものといえます。

そのような視点におけるセラミックスドローイングの役割は、平面性やドローイングといった従来の表現形式、技術体系とは異なる方法論を採用することで、やきものの基本構造を独自のアプローチによって探るものであり、その可能性の端緒を開こうとする私なりの表明でもあります。

この着地点の所在は予想さえできませんが、試みはまだ最初の一歩を踏み出したばかりです。まずはそこに現れる事象を注意深く観察し、自らの認識を磨くところから取り組んでいきたいと考えています。

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Ceramics Drawing・赤いシャボン玉‐SUPERNOVA /2011制作 450×450×9mm 炭酸銅、アルミナ紙、板硝子/780℃焼成

Ceramics Drawing・赤いシャボン玉 1-5 /2010制作 各300×300×7-20mm 炭酸銅、アルミナ紙、板硝子/760℃-800℃焼成

Ceramics Drawing・Ice yellow 1‐3 /2010制作 各300×300×7mm イエロー顔料、アルミナ紙、板硝子/760℃焼成

Installation view/淀 2010

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